台北郊外の台湾桃園国際空港と沖縄県の新石垣空港を結ぶ台湾のトランス
アジア航空の直行便が就航した。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での台湾漁船の操業を認めた「日台漁業取り
決め」をふまえ、台湾が石垣市側の要望に応じたもので、漁業取り決めで
譲歩した日本側への「事実上の返礼」(台湾与党幹部)との見方もある。
最初の直行便に乗り、漁業や観光を含めた日台交流の現状を探った。
23日、週に2往復する就航便の第1号に観光客や約90人のメディアと
搭乗した。
今年3月に開港した新石垣空港で初の海外との定期便とあって、到着口で
出迎えた中山義隆・石垣市長は、「台湾とさらに近く深い関係に」「石垣が国際
観光都市として飛躍するチャンス」とあいさつした。
日本政府による尖閣諸島国有化を受け、台湾北東部の宜蘭県蘇澳鎮(町)から
抗議の漁船団が尖閣に押し寄せたのは昨年9月のことだった。
(支那中共の工作による)
日台漁業協議の進展が危ぶまれたが、同11月には中山市長が訪問団を率い
て蘇澳を訪れ、漁業者同士も交流。
市側はこのとき定期直行便の「要請書」を提出し、双方の感情には雪解けムード
も出ていた。
「(直行便の)就航日に蘇澳の漁船が拿捕(だほ)されるとは」。
八重山漁協の上原亀一組合長がいう。
23日未明、八重山諸島北側の日本の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業
していた台湾漁船「福昌168号」のことだ。
取り決め発効後の台湾漁船としては3隻目。
以前の2隻が八重山諸島南側での拿捕だったのに比べ、今回は取り決め適用
水域の中でも、日本側が最も抵抗した「逆三角形水域」の南側だった。
クロマグロの豊かな漁場である同水域はかつて台湾漁船の違法操業が常態化
拿捕も集中していた。
「蘇澳区漁会(漁協)からおわびの電話があったが、台湾側は数で日本側を
圧倒し、ルールを守る姿勢が弱い。
今は日本側の自制で何も起きていないが、腹立ちまぎれの日本側が入ってい
けば、必ずトラブルがおきる」と上原さんは頭を抱えている。
7日に台北で開かれた日台漁業委員会本会議では、操業先行を主張した
台湾側と、ルール策定後の操業開始を主張した日本側で意見が合わず
結論は次回に持ち越しとなっている。
「昔は漁場で台湾漁船から『釣れますか?』と声を掛けられ、一緒に食事もした。
今は言葉も通じない」
蘇澳まで110キロ。年に数回は台湾が遠望できる日本最西端の与那国島で
与那国町漁協の組合員の一人(49)が話した。
日本語で意思疎通できたのは20年以上前。
「(沖縄の)復帰前の荒天時には台湾漁船も久部良漁港に避難してきた。
今の若い漁師はそんな過去を知らないし、親近感も薄れている」
これに対し、蘇澳区漁会の陳春生理事長は今年6月からサバとアジの禁漁
区を設けた。
日本語通訳も雇ったと、信頼回復に向けた努力を強調している。
往復の直行便の機内で会った台湾の旅行者によると、新石垣空港では搭乗
受け付け開始まで冷房のある棟内に入れず、炎天下で長時間待たされた人や
ホテル側の対応に不満を持つ人がいた。
「台湾からの旅行客は大事にされていない」と感じたツアー客もいた。
台湾を出発して石垣島などをめぐるクルーズ船は以前からあるが、新たに
就航した“空の便”でリピーターを取り逃がすようでは、台湾の観光客誘致も
安泰とは言いがたい。
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