いずも空母化とF-35B搭載?
去年12月後半に見直される現防衛大綱の中で
「多用途運用母艦」を導入する方針で、そのため
「いずも」型護衛艦を改修することが報じられています。
岩屋毅防衛相は27日の記者会見で、政府が新たな
防衛大綱に導入方針を盛り込む方向の「多用途運用母艦」
について、海上自衛隊最大の「いずも」型護衛艦の改修を
軸に検討していることを明らかにした。
また、艦載機としては、F-35Bが想定されているようです。
航空自衛隊が既に導入しているF-35Aと異なり、F-35Bは
短距離離陸・垂直着陸(STOVL)型で、主にアメリカ海兵隊
やイギリス海軍での運用が想定されているタイプです。
F-35Bは前述の通り、STOVLと呼ばれる離発着方式を
行うタイプです。
これは、燃料や武装を搭載して重くなっている離陸時は
短距離の滑走を行って離陸し、燃料を消費して軽くなって
いる着陸時は垂直に着陸するという運用を行うもので
アメリカが保有する空母のような長大な飛行甲板を
持たない空母や強襲揚陸艦に搭載することを想定しています。
F-35B搭載に必要な改修
飛行甲板は
運用する航空機の重量に耐えられなければいけませんし
排気が下に向く航空機を艦艇で継続的に運用する場合
その排気の熱に耐えられる甲板が求められます。
例えば
タンカーを改修したアメリカ海軍の病院船マーシーは
従来からヘリコプターを運用する甲板を持っていましたが
V-22オスプレイ運用に適さないため、オスプレイを
運用できるよう改修が予定されています。
では、具体的にどういう改修が必要となるでしょうか。
F-35Bの運用を想定している艦艇を見てみれば
いずもに必要とされる改修内容も見えてくるでしょう。
例えば、イギリス海軍の空母クイーンエリザベスでは
ジェット・ブラスト・ディフレクターと呼ばれる「盾」が
甲板に仕組まれています。
これは、高熱で強力な排気の直撃から甲板上の乗員や
機材を守るための装備で、甲板からせり出た盾で排気を
上空に逃すことで乗員を守っています。
単なる板ではなく、排気の熱に耐えるため、内部には
冷却水が循環する構造になっています。
また、飛行甲板自体にも熱対策が必要です。
F-35Bを継続的に運用するには
米海軍航空システム・コマンドの研究によれば
華氏1700度(摂氏約927度)以上の熱に耐える飛行甲板が
必要とされています。
そのため
アメリカ海軍のアメリカ級強襲揚陸艦、ワスプ級強襲揚陸艦もF-35Bを運用するために飛行甲板に耐熱コーティングを
施すなどの改修を受けています。
以前、いずもの飛行甲板でV-22オスプレイが離着陸した
ことがあり、オスプレイの排熱に耐えられるのではないか?
という推測がされたことがありました。
しかし、オスプレイの継続的な運用に必要な耐熱温度は
華氏380度で、摂氏約193度とF-35Bと比べればずっと
低い要求です。
F-35Bはオスプレイとは桁違いの排熱を出しており
いずもの飛行甲板も改修が必要になることでしょう。
F-35Bの航続距離や多用途性を考えれば、ハード面に
留まらずソフト面でも、いずも以上の管制・指揮能力が
求められるでしょう。
機材の更新・追加に加え、より広いスペースの確保や
人員の増員がなされると考えられます。
有用性は?
しかし、仮に艦載機としてF-35Bが導入されるとなると
運用的には現用機の後継ではなく、新規の導入という
形になります。
厳しい財政が続く中で新たな戦闘機を導入することの
是非や、F-35B運用を担うのは海上自衛隊か航空自衛隊か
といった問題も出てくるでしょう。
いずれにせよ、いずもの空母化とF-35B導入がされた
ならば、海上自衛隊が新たな時代を迎えることになるのは
間違いないでしょう。
小型の空母・強襲揚陸艦と少数のF-35Bの組み合わせ
の有用性については議論がありますが、これが
目論見通りに行くか、中途半端に終わってしまうのか
それともまだ他の「本命」が控えているのか。
結果が判るのは、まだまだ先になりそうですw。
海上自衛隊 翔鶴計画