靖国神社問題を
分かりやすく整理してみる
何かと話題になる靖国神社について
何が問題なのか?
そもそも靖国神社とは何なのかよくわからないと
いう声があります。
分祀論について
最初にお話しなければならないことは
「分祀」という言葉の使い方が間違っている、ということです。
神道において分祀とは分け御霊を他の場所にお祀りすること
であり、元の座には留まられます。
例えば全国の稲荷神社の多くは伏見稲荷大社から分祀されて
いるわけですが、分祀されたからといって、大元の伏見稲荷の
神さまがいなくなるわけではありません。
ですからA級戦犯を分祀するというのは、元の神座の他に
別の場所にお祀りする場所を増やす、ということになってしまいます。
一般的に言われているA級戦犯分祀論は
そうではなく除けということですから、「除祀」とかそういう
言葉の方が合っていると思われます。
最もそのような言葉はありませんので新たに作るしかありません。
「除祀」の例はほとんど聞いたことがありませんが
強いてあげれば神田神社の例でしょうか。
大己貴命と平将門命がお祀りされていましたが
明治天皇が参拝される際に、逆賊である平将門が祀られて
いるのはよくないとして摂社に移させたという事があったそうです。
A級戦犯分祀論を唱える人は
明治政府が大嫌い人も多いのですが、これと同じ事をしようと
している、というのは大変不思議な話です。
また、実際にA級戦犯を分祀するには
国家が命令するわけにはいきません。
本当に政教分離違反になってしまいます。
ですから、靖国神社が自発的に除祀するように各所から圧力を
加えるということになります。
命令するよりもっと
タチの悪い政教分離違反です。
こんなことできるわけがありません。
ですから、もし分祀(のようなもの)をすることになっても
結局靖国神社側が納得する形でしかできないのであって
現在の分祀論者が主張するような形ではできないと断言します。
無宗教?の追悼施設
A級戦犯分祀論と並んで出てくるのが、靖国神社とは別に
「無宗教の追悼施設を作る」という意見です。
無宗教だから政教分離に違反しないし、誰でもわだかまりなく
追悼できる、というのですが、まず最初の疑問としては
日本人にとってそもそも追悼行為自体が宗教行為になる
のではないかということです。
また、無宗教の施設なので、各宗教のやり方で追悼して下さい
ということだそうですが、建物の形状や祭壇等はどうなるので
しょうか。
必ずどこかで「形」を決めなくてはなりません。
そうやって考えを詰めていくと、これは
「国家が無宗教という宗教を作る」ことになるのではないか
というのに気がつきます。
政教分離論の中では
最も愚かな考えであると思われます。
さらにこの施設で行うのは追悼のみです。
戦死者を顕彰すると侵略戦争の肯定になるし、慰霊となると
宗教行為となるから、ということですが、追悼のみ
つまり「悲しいですね」と悼むだけの施設を税金を掛けて
わざわざ新たに作るのでしょうか。
以前、靖国神社自身から宗教性を取り除く、という案もありました。
鳥居は外し、二礼二拍手一礼や玉串の拝礼はしない等行う
そうですが、そこまでしてしまうと、一体これは何なのかと
疑問に思えてきます。
どうも、無宗教の施設をと言う人には宗教や伝統についての
観念が抜け落ちているのではないかと感じます。
もっと驚くのは追悼の対象は
「敵味方区別なくすべき」という案が出たことです。
平成13年に攻撃してきた北朝鮮の不審船の死者も祀るべきだ
とか言い出す人までいてもう滅茶苦茶です。
日本の伝統だとか言っていますが、敵は敵だけで祀るなら
まだしも、いっしょくたに祀る必要があるのでしょうか。
無宗教の追悼施設という案は何度も浮かんでは消えていきました。
その一番の理由は
「作っても誰もお参りしないのでは」ということです。
熱心に慰霊したい人は
靖国神社を支持していますが
無宗教の追悼施設を主張する人はそこまでの熱意はありません。
当然の結果だと思われます。
靖国神社のこれから
これから靖国神社がどうなるかですが
現状では何も変えられる状況ではありませんので、しばらくは
このままでいくと思われます。
A級戦犯分祀は行われないでしょうし、新しい追悼施設は
建たないでしょう。
筆者は参拝してほしいという思いはありますが、ここまでの
外交案件となってしまうと、総理大臣の参拝も気軽には
行えないでしょう。
靖国神社は現在は一宗教法人ですから、自力で収入を
得なければなりません。
しかし、心配なのは熱心に寄進されていた
元軍人やその遺族の人たちが世代交代によって少なくなって
きているため、靖国神社の収入も昔に比べて減っていることです。
靖国神社を護持したいという気持ちがあるのなら
お金を出して支えていくことが大切です。
靖国神社崇敬奉賛会がありますので入りましょう。
今後の不安はありますが、明るい面もあります。
靖国神社を訪れるとわかりますが、お参りにきている若い人が
非常に多いことです。
また、地方には靖国神社と関係の深い護国神社がありますが
そこでは結婚式が増えているところもあるそうです。
よく知らない若者が結婚式を依頼して
戦没者の方がご祭神ですと教えると、かえって
「そういう方達の前で式が出来て身が引き締まります」
と言ってくるそうです。
そのようにして、由緒を次の世代の人達に説明していくこと
が靖国神社を維持していくことにつながるのでしょう。
靖国神社遊就館の海軍カレー