○F3戦闘機とは?
F16を元に
日米共同開発されたF2戦闘機の後継機の俗称です。
F2戦闘機
F16戦闘機
F2戦闘機はいわゆる"マルチロール機"・"戦闘攻撃機"に
分類され、ある程度の対地攻撃能力と強力な対艦攻撃能力
を持つことから、後継機であるF3にもそれらの能力を持つ
ことが求められます。
○F3戦闘機の開発を巡る経緯
F2戦闘機開発の際に日本は最初、単独開発を望んで
いました。
しかしアメリカからの政治的圧力と技術的要因、特に
実用に耐えうる高出力エンジンの開発が難しかった
ことにより最終的にはアメリカとの国際共同開発に
落ち着いた経緯があるのです。
しかも、そのアメリカとの共同開発で日本はかなり悔しい
経験をしています。
というのも、なんとアメリカはその技術的優位を利用して
半強制的に日本に最新のレーダー技術(日本の得意分野)
を開示させたにも関わらず、戦闘機に搭載する
ソフトウェアのソースコードは開示しないという舐めっぷり
だったのです。
(現代の戦闘機においては、ソフトウェアのソースコードが
極めて重要で性能を大きく左右する)
さらに開発費は高騰し、機体単価も当初予想より大幅に
増え、計画配備数を満たす前に製造を終了してしまいました。
(ただし、F2はその後の改修により今ではかなり良いもの
に仕上がっています)
これらの経緯から日本は、独自でステルス技術・レーダー
技術・戦闘機用高出力エンジンの研究を進めてきました。
あのATDX(X-2)と呼ばれる技術実証機はこれら地道な
研究の賜物なのです。
*ATDX(X-2)についてはコチラ↓
そして今回のF2後継機開発を巡る問題。通称F3の開発に
は以下2通りの案があります。
・国内単独開発
・国際共同開発
日本政府内でもどちらにするか意見が割れているようで
2018年夏には決定すると言われていましたが延期されました。
それではここで国内単独開発、国際共同開発について見て
いきましょう。
○国内単独開発
メリット
・自分たちの要求に柔軟に対応できる。
・改修や追加配備などにあたり、他国の影響を受けない。
・国内産業の活発化に繋がる上、雇用も創出され、経済効果
が見込める。
・自国の技術力躍進が見込める。
デメリット
・戦闘機の独自開発経験がないため、技術的不安が多く残る。
・他国への輸出が無いと製造数が少なくなってしまい
機体単価が高くなる。
◇国内単独開発を巡る動き
(1998〜継続中)
各種レーダー/センサー・ステルス技術・アビオニクス
技術・HMD・火器管制システムの研究
(2010〜2015)
次世代エンジン主要構成要素の研究
(2016)
ATD-X初飛行
(2013〜2017)
戦闘機用エンジン要素の研究
(2018)
IHI製 XF9-1(新型エンジンの試作品)導入
◇XF9-1について
XF9-1は新型戦闘機に搭載するエンジンを実証するための
研究用でIHI製です。
とは言っても
ドライ推力11t・アフターバーナー推力15t以上で実用に
十分なレベルの出力です。
タービン入口温度は1800℃以上、直径は1mという
コンパクトさでこの出力は画期的です。
さらに日本の得意分野である素材技術を生かした
セラミック複合材・特殊な超合金でエンジン温度を
高くすることに成功しています。
従って、前回のF2開発の時に問題となった
「自前でエンジンを製造できない」という問題は解決間近
といったところです。
○国際共同開発
メリット
・海外の高い技術を習得できる。
・製造コストが国内単独開発よりも抑えられる可能性が高い。
・各国の得意分野の技術を持ち寄ることができる。
・戦闘機を製造した経験があるメーカーとの共同開発には
安心感がある。
デメリット
・国内での経済効果は限定的。
・追加配備や改修には他国の同意が必要になることもある。
・核心技術がブラックボックス化された場合
技術を得られないばかりか自前での改修などが難しく
なる可能性がある。
・他国との、特に性能面での妥協が必要となる場合もある。
◇国際共同開発を巡る動き
(2018)
日本政府がエアバス・ボーイング・ロッキードマーティン
など各社に情報要求書(RFI)を提出。
これに対して、ロッキードマーティンは日本政府に
「F22とF35のハイブリッド型新型機の開発」を提案する。
(2018)
イギリスが開発する次期戦闘機"テンペスト"の開発に
参画( つまり、共同開発したテンペストをF3として採用)
する可能性がある旨が報道される。
(2019)
日本の安倍首相とイギリスのメイ首相が会談、安全保障分野での協力拡大で合意する。この中に、戦闘機開発が含まれている可能性もある。
◇「F22とF35のハイブリッド型新型機」について
*この案は廃案になった可能性が高いです。
詳しくは一番下の追記をご覧下さい。
F22はアメリカ軍でしか運用されていない
(機密が多すぎるため議会が他国への輸出を禁止したため)
文句なしに世界最強のステルス戦闘機です。
ところが格闘戦闘能力やステルス性は非常に優れている
一方、レーダーや戦闘用ソフトウェアは少しずつ時代遅れ
となってきています。
F35は新しく世界9か国で共同開発されたステルス戦闘機で
格闘戦闘能力やステルス性はF22に劣ります。
しかし、レーダー・ソフトウェア・コックピット周りの
装備・味方と協力するための強力なネットワーク機能など
はF35がF22を圧倒します。
つまり、機体性能が最強のF22とその他のアビオニクス
関連が最強のF35を掛け合わせて、いいとこ取りの
新型機を作ろうということなのです。
これだけ聞くとこのプランが最高のように思えますが
次に上げるようないくつかの問題もあります。
・調達費用が極めて高くなる可能性がある。
なんと1機230億円との話もあります。ちなみにF35は
日本向け価格が1機あたり146億円です。
・アメリカ軍がこの新型機を導入する可能性が低い。
アメリカ軍も勿論、F22の後継機を欲していますが
既存機の改修ではアメリカ軍の求める新型機の性能を
満たすことができない可能性が高いのです。そうなると
当然、アメリカ軍優先のアメリカ企業にとって
日本オリジナル機であるこの機種の改修・性能向上は
あまり利益が見込めないために消極的になってしまう
可能性が高いです。
つまり、将来的にこオリジナル機の性能向上改修などが
滞りがちになる可能性が高いのです。
イギリスでは、老朽化するユーロファイター・タイフーンの
更新機種として"テンペスト"の開発を計画してきました。
テンペストは従来の機関砲に変わりレーザー兵器や
F35を上回る最新のアビオニクスを搭載する予定となっています。
ところで、F3開発にあたって、ロッキード・マーティン(アメリカ)
の案が没になった以上、実質この案(イギリスとの
共同開発)しか残っていないことは事実です。
しかし、未だ日英両国から公式なアナウンスは無いなめ
詳しい情報は分かっていません。
日本政府は2019年4月から開発作業を開始したい意向で
あり、開発プランの早期決定が急がれます。
○結局のところは国際共同開発か