エヴァなぜ人気?
昨年公開され大ヒットしたアニメ映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のブルー
レイディスク(BD)とDVDが24日、発売された。単なるソフト化といえばそれま
でだが、これに合わせファストフード店などでタイアップ企画が相次いだほか
ネット通販大手アマゾンでは商品配達をめぐりレビュー欄が“炎上”。良くも悪く
も、「社会現象アニメ」と呼ばれる「エヴァ」人気の大きさを印象づけた。
「発売日にお届けと謳(うた)っておきながらこのていたらく」「いい加減にしろ」
「絶対に許しません」-。
アマゾンの「Q」レビュー欄には24日以降、発売日当日に商品が届かないこと
への苦情が殺到。一刻も早くソフトを入手し作品を鑑賞したいファン心理が
アマゾンや配達業者への怒りに変わった。
これに対し、「少しばかり届くのが遅れるなんてよくあること」「(ここは)商品の
レビューをするところで、発送の文句をいっても仕方ない」といさめる意見も
寄せられ、「レビュー欄」が混沌(こんとん)とした“コメント欄”と化した。
さらに、「倉庫からやがて飛び立つ」「もう『笑えばいいと思うよ』としか言え
ない」などとTVシリーズの主題歌の替え歌を披露したり、作中の名ぜりふを
引用したり…とファン特有のユーモアを感じさせるレビューも。喜怒哀楽は
人それぞれだが、思わぬ場所で発生した“祭り”を、待ちに待ったファンはさま
ざまな方法でかみしめているようだった。
一方、肝心の本編は、劇場版から細かい作画の修正が加えられている。
公開時のポスターなどでは「EVANGELION:3.0」と書かれていたが
今回発売されたディスクは「3.33」。つまり、バージョンが上がっている。
劇場公開時に同時上映された「巨神兵東京に現わる 劇場版」に加え
「Q」の制作過程が分かる「Rebuild of EVANGELION:3.33」や
「AR台本」も収録。特に「Rebuild-」では、カメラ十数台を使って実際の
ピアノ連弾を撮影し、トレース(アニメへの模写)したという作中の演奏シーン
の「作り方」がよく分かる。
それでも、まだ「続き」があると考えると、「Q」を味わい、受け入れた上で
いてもたってもいられない気分になる。しばらく作品を忘れていても劇場に
足を運ばせ、内容に賛否両論あってもソフトや関連商品を買わせる「エヴァ
の呪縛」は健在だ。
劇場版完結編(?)となる「シン・エヴァンゲリオン」の公開時期は未定だが
時のたつのは早く、再来年はTV版の舞台となった「2015年」を迎える。
多くのファンの心を十数年にわたってわしづかみにしてきた「呪い」は
いつ解けるのだろうか。
劇場版「エヴァ」なぜ人気? 秘密主義と
“未完成さ”がファンを刺激
「エヴァ」の愛称で呼ばれるアニメシリーズの新作「ヱヴァンゲリヲン
新劇場版:Q」が人気だ。公開1カ月(19日時点)で327万人を動員。
興行収入は45億円に達し、昨年の邦画興収1位だった「コクリコ坂から」を
すでに上回った。平成7年のテレビ放送開始以来、一部で熱狂的な支持を得
ながら難解さのため客層を選んできたが、今作は従来のファンの枠を超えて
観客を集めているようだ。秘密はどこにあるのか。
エヴァは、14歳の少年少女が巨大な人型兵器「エヴァンゲリオン」に乗り
人類を襲う謎の敵「使徒」と戦う物語。テレビ版に続いて制作された劇場版で
シリーズは9年にいったん完結したが、19年に「新劇場版」の公開がスタート。
1作目「序」はほぼ旧シリーズのリメークだったが、2作目「破」で新キャラクター
が登場するなど物語に変化が生じた。3作目の「Q」は展開が予想不能となり
公開前のファンの期待は最高潮に高まっていた。
新劇場版では、庵(あん)野(の)秀明総監督(52)が社長を務める「カラー」
が制作や宣伝をほぼ一手に引き受け、大手広告代理店や配給会社を通さ
ない「インディーズ映画」の手法を採用。事前試写会を開かず、公式画像を
使用するメディアには記事内容の事前確認を求めるなど、ストーリーには
徹底した秘密主義を貫いた。
アニメコンテンツに詳しい電通第4CRプランニング局の柳田有一さんは「計算
されたプロモーション戦略。本編の情報は隠しつつタイアップなどを使って
キャラ自体は露出させ、ファンの飢餓感や口コミを誘発した」と指摘する。
実際、公開前から全日本空輸(ANA)など多くの有名企業がコラボ商品販売
などでタイアップし、ファン心理を刺激した。柳田さんは「ネットなどでエヴァの
話題が増えることで、『見た方がいい作品』として認知された」とみる。
一方、作品としての「Q」は賛否が分かれ、ネットでは、説明を省いた展開に
「難解過ぎる」などの否定的な声も。作品の謎の考察も活発に交わされて
いるが、エヴァはテレビ版で最終回直前に舞台が突然、主人公の内面世界
に移り、多くの謎が解決されないまま終了してファンをあぜんとさせた“前科”
がある。このため「謎解き」や「完結」が次作で実現するかも疑問視されている。
エヴァを論じた「エ/ヱヴァ考」の著者で文芸評論家の山川賢一さんは
エヴァの魅力について「ミステリーやアクションなどさまざまなエンタメ要素が
含まれており、映像や演出の質が高い」と指摘。その上で「設定はリアルなよ
うで不条理な部分もあり、物語の着地点はいまだ見えない。それがかえって
ファンをひきつける」と分析する。作品としての“未完成さ”が最大の魅力なの
かもしれない。
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