オバマ大統領が、米カリフォルニア州で行われた米中首脳会談で、習近平
国家主席に対し
「まず中国側は、日本が米国の同盟国であることを認識する必要がある」と通告
していたことが分かった。
習主席が、沖縄県・尖閣諸島を「中国固有の領土」などと主張したことに、事実上
「軍事的挑発は認めない」と強くくぎを刺したものだ。
習主席としては、米国に海洋拡張主義を黙認させる思惑があったが
第1ラウンドは完敗といえそうだ。
7、8日の2日間、計8時間にわたった米中首脳会談の核心部分は、複数の
政府高官が明らかにした。
米政府が外交ルートで伝えてきたもので、オバマ大統領は13日午前、安倍晋三
首相と電話会談し、改めて会談内容を説明したもようだ。
注目の会談で、習主席は、尖閣諸島がある東シナ海や南シナ海の領有権
問題について、「国家主権と領土の統一を断固として守る」と語ったうえで
「一部の国が挑発的な行為をやめ、対話による解決の道に戻るよう希望する」と
いい、日本などを牽制したという。
さらに、習主席は「太平洋には米中両国を受け入れる十分な空間がある」とも
述べた。米中両国が共存・共栄する「新型大国関係」の意義を説いたものとされ
るが、同時に「尖閣を含む、東シナ海は中国の空間だ」と強弁し、太平洋を
「米国の一極支配」から「米中分割支配」へと切り替えようとアピールしたものに
他ならない。
これに対し、オバマ大統領は冒頭のように、日米の強固な同盟関係に言及して
中国側に警告したうえで、「米国は、日本と日本の民主主義を完全に信頼している。
日本は成熟した民主主義国だ」と述べたという。
これは、「自由」「民主主義」「人権の尊重」「市場経済」「法の支配」といった
価値観を共有する日本への信頼感を強調することで、1党独裁国家である中国
の侵略・拡張主義を威圧した発言といえそうだ。
じつは借金まみれ
中国政府の厳しいフトコロ事情
大手格付け機関による中国の格下げが相次いでいる。4月9日にフィッチが
中国国債の信用格付けを「AAマイナス」から1段階引き下げて「Aプラス」にした
のに続き、4月16日にはムーディーズが中国国債の格付け見通しを「ポジティブ
(強含み)」から「安定的」に引き下げた。
IMFによると、中国の公的債務のGDP比率は昨年末で22%にすぎない。
日本の236%、米国の107%という財政状況に比べ、格段に健全であるはずの
中国の国債が、なぜ格下げされたのか?
じつは中国政府が公表する公的債務には、地方政府の債務は含まれて
いない(日本や米国は地方自治体分も含めて公表)。
だが、中国の地方政府は借金まみれなのだ。
中国は共産主義体制のため、地方政府が独自に債券を発行したり銀行融資
を受けることは禁止されている。
しかし、抜け道もある。
「地方政府が資金調達のための特別会社を設立し、その特別会社から資金を
借りる仕組みが全国的に広がっている。
いわば、トンネル会社を通じて資金調達する『迂回融資』にほかならない」
このトンネル会社は「融資平台」と呼ばれ、融資平台を経由した迂回融資は
少なく見積もっても中国のGDPの25%に上ると見られている。
だが、実態は不透明。中国審計署(会計検査院)は、地方政府の隠れ借金を
約11兆元(約150兆円)と試算するが、中国のシンクタンクの推計では約15兆元に
上る。
「20兆元を超える」と公言する元政府要人もいるほどだ。
こうして借り入れた資金が、のきなみ焦げ付いている。
「地方政府は調達した資金で過剰なインフラ投資を行っている。たとえば中国に
は80の空港が建設されたが、約7割は赤字」
中国の隠れ借金はこれだけではない。急ピッチで進める鉄道建設の債務や
日本以上の少子高齢化が進む中での年金債務もある。
これら借金の総額はGDPの100%を超えるとの見方もある。
「次の世界的な債務危機は中国が発火点になる」という予想もあるほど。