【北京=山本勲】7、8日に行われた米中首脳会談で最大議題となったサイバー
攻撃問題をめぐる米中の攻防が一段と熱をおびてきた。
香港滞在中の元米中央情報局(CIA)職員、エドワード・スノーデン氏が米国の
対中ハッキング行為を香港紙に証言。
米政府が同氏の身柄拘束に動き始めたことに対し、中国の国際情報紙
「環球時報」は17日付社説で中国がスノーデン氏を保護するよう主張した。
習近平政権に近い学者も同紙で米国を「泥棒」と表現し、非難。
いずれも習政権の意向を反映したとみられ、中国が対米反撃に転じた形だ。
中国外務省の華春瑩報道官は17日の記者会見で「米側は国際社会の懸念を
重視し、説明すべきだ」と述べたが、スノーデン氏の身柄を米国に引き渡すべき
かどうかについては明言を避けた。
オバマ大統領と習近平国家主席の首脳会談では、米側が中国軍などによる
対米サイバー攻撃を重大視し、「サイバー空間の安全確保」を強く求めた。
中国側も「そのための共通ルール作りに取り組む」ことで合意したが、双方の
不信感解消にはほど遠かった。
スノーデン氏が、「米国家安全保障局(NSA)が2009年から中国や香港で
ハッキング行為を行っていた」と暴露したのは会談の数日後。
極めてタイムリーに「中国もサイバー攻撃の被害者」(習主席)との主張を実証
した形だが、米側には中国の関与を疑う声もあり、スノーデン氏の取り調べを
急ぎたいところだ。
17日付の環球時報紙は1面トップで「半数の香港人がスノーデン氏の(米国)
引き渡しに反対している」と報道。
「米国はすべての同盟国を動員して彼を逮捕しようとするだろうから、中国内の
大学に招聘(しょうへい)するのが最良の方策」(陳文鴻・香港理工大学中国商業
センター主任)などの声を紹介した。
習政権の外交ブレーンとされる沈丁立・復旦大学国際問題研究院副院長も
同紙に「泥棒が泥棒を捕まえろと言っている」と非難、「米国が中国の安全を
侵犯する行為を即時停止するよう求める」と主張した。
さらに社説では「彼の行為は香港・中国を含む世界の公衆の利益に符合する」
「中国は大国として庇護(ひご)者の役割を避けられない」などと中国が
スノーデン氏を保護するよう求めた。
米秘密機関、中国を15年間サイバー
攻撃していた―米メディア
2013年6月14日、米誌フォーリン・ポリシー電子版(10日付)によると、現在
「盗聴スキャンダル」で窮地に陥っているアメリカ国家安全保障局(NSA)が
「Tailored Access Operations」(TAO)という名の秘密組織を設け、過去15年間に
わたり中国のコンピュータおよび通信システムに侵入し、中国国内に関する
「最良の、最も信頼できる情報」を入手していたことが一連の機密情報漏えいに
より明らかになったという。
これにより米国が中国のサイバー攻撃を批判するたびに、「われわれも被害者
であり、しかもその大部分は米国からのものだ」という中国政府の主張はほぼ
正しかったことが証明された。
報道によると、1997年に設立されたTAOは、メリーランド州フォート・ミードの
NSA本部内に隠されており、そのエリアはNSAの他の機関から隔離され
NSAの多くのスタッフはその存在さえ知らない。
NSA職員でTAOの情報を完全に知ることのできる者はほぼいない。
TAOの活動内容は非常に敏感であり、業務エリアに入るには特別な検査も
受ける必要がある。
近代的な業務センターのドアは武装警備員により守られており、鋼鉄のドアを
通るためには正しい6桁のパスワードを入力したうえ網膜スキャンを受けなけれ
ばならず、特別な検査を経た人物のみが通れるようになっている。
元NSA職員は「TAOの任務は非常にシンプルだ。標的となる海外の
コンピュータおよび通信システムに密かに侵入し、パスワードを解読し
セキュリティーシステムを解除して、ハードディスク上のデータを盗み取る。
次に全ての情報とデータをコピーし、電子メールおよびテキストメッセージ
システムを通じて伝送し、情報資料収集の目的を達成することだ」と語った。
米ウェブサイト「ビジネス・インサイダー」は11日付で「聞き覚えがあることだろう。
米Mandiant社が中国による米国へのサイバー攻撃を批判した際に指摘した
手法と同じだからだ」とからかった
情報によると現在TAOはNSA情報収集理事会で最大かつ最重要の構成部門
であり、1000人以上の軍および民間のハッカー、情報アナリスト、標的設定の
専門家、コンピュータのハード・ソフトの設計士、電気エンジニアなどを擁し
週7日間、24時間体制で交代勤務している。
フォーリン・ポリシーは「これほど重要になったTAOを、これ以上隠匿するのは
事実上不可能だ。
中国政府はTAOの活動について確かに知っており、証拠を公表すると脅して
もいる。
このため今月行われた米中首脳会談で、オバマ大統領はサイバー問題に
ついて中国に余り大きな圧力をかけられなかった。
いちかばちかのポーカープレイヤーなら誰でも知っているように、手中のカード
を対戦相手に知られたら、調子に乗ることができるのはそこまでだ」としている。
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